畑には、不思議な静けさがあります。
風が吹き、土の香りが漂い、季節が少しずつ移り変わっていく。
その中に身を置いていると、普段は気づかずに通り過ぎてしまうようなことに、ふと足を止める瞬間があります。
収穫の日。
土の中から姿を現したさつまいもは、一つとして同じ形をしていません。
まっすぐ伸びたもの。
少し曲がったもの。
手のひらに収まる小さなものもあれば、ずっしりと重たいものもあります。
どれも同じ土で育ち、同じ太陽の光を浴び、同じ季節を過ごしてきました。
けれど畑を離れた途端、「規格」という物差しが現れます。
その物差しに合うものと、合わないもの。
その違いだけで、それぞれの価値が決まっていく。
最初は、それが当たり前なのだと思っていました。
でも、畑で過ごす時間が長くなるほど、どうしても一つの問いが心に残るようになりました。
価値とは、本当に誰かが決めるものなのだろうか。
その問いから、この干し芋づくりは始まりました。
最初は思うような味になりませんでした。
乾燥方法を変え、時間を変え、何度も試作を重ねました。
そしてたどり着いたのが、一度じっくり焼き芋にしてから乾燥させるという方法です。
火を入れることで、さつまいも自身が持っていた甘さがゆっくりと引き出され、砂糖を使わなくても糖度約51%という自然の甘さへと変わっていきました。
食べやすさも大切にしたい。
そんな想いから、一本一本をスティック状に仕上げることにしました。
気軽に手に取れることも、おいしさを届けるための大切な工夫だと思ったからです。
振り返ると、私たちは新しい価値をつくろうとしていたわけではありません。
さつまいもを別のものへ変えようとしていたわけでもありません。
ただ、そのさつまいもが、もともと持っていた力を信じ、その価値がもっと自然に伝わる方法を探し続けていただけでした。
その時間は、不思議と農業だけの話には思えませんでした。
何かを育てるということは、形を整えることではなく、そのものが持つ力を信じること。
焦らず、比べず、ゆっくり待つこと。
畑は、そんなことを静かに教えてくれます。
だから私たちは、この干し芋を「商品」としてだけではなく、人や地域をつなぐ小さなきっかけとして届けたいと考えています。
淡路島では、共感コミュニティ通貨「国生みコイン」の活動にも取り組んでいます。
「ありがとう」や「応援したい」という気持ちが地域の中を巡り、人と人、農家とお店、福祉や教育、子育てや観光など、これまで接点の少なかった多様なコミュニティがゆるやかにつながっていく。
誰かの価値を競い合うのではなく、お互いの価値に気づき、活かし合える地域を育てていきたい。
その願いは、干し芋づくりも、国生みコインも、私たちのすべての活動につながっています。
一つのさつまいもが持っていた価値を信じること。
その小さな積み重ねが、いつか地域全体の豊かさにつながっていくことを願っています。
推薦者の共感コメント
MUKUは、野菜を育てるだけの農園ではありません。
それぞれの「好き」や「得意」を持ち寄り、多様な人たちが集い、つながり、共に育つ場所。
人も野菜も、一つとして同じものはありません。
だからこそ、その違いを認め合い、活かし合うことで、新しい可能性が生まれる。
自然に育ったお芋だから、一つひとつ甘さや食感が違います。
それもまた自然本来の在り方。
砂糖や添加物に頼らない自然の甘みと、人の想いが詰まった干し芋です。
(推薦者:田中里佳)